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薬膳講義
 

豊島区の生涯学習事業の一環として、千早社会教育会館を会場に「春の文化カレッジ『ヘルシークッキング』講座」が開催されました。講師を依頼された湯先生を中心に、中国医学薬膳研究会のスタッフと共に24名の参加者が薬膳料理を楽しみました。
今回は第一回目(6月10日)の湯先生の講義をご紹介します。
 
薬膳について はじめまして、湯忠立です。
今日から皆さんに薬膳のお話をいたします。日本では薬膳という言葉にさまざまなイメージがありますが、これからお話しする薬膳は中国医学に基くものです。皆さんのイメージとは違うかもしれませんね。
考え方はとても古いのですが、薬膳という言葉が一般的になったのは今から20数年前です。今ではヨーロッパでも盛んに勉強されているんですよ。
昔の中国の周の時代、紀元前10世紀ころの本に、当時の医者は4種類あると書かれています。一つは今の日本でいう内科の医者、それから外科、そして獣医、もう一つが食医です。この食医は一般的な病気の治療ではなく、薬膳を使って当時の皇帝の健康管理をすることが仕事でした。したがって医者の中では一番上にランク付けされていました。この食医の仕事が中国の食事療法の始まりです。そして長い間の経験が積み重ねられて今日の薬膳となりました。
 
中国医学の
基本概念
現在、中国の病院ではいろいろな治療方法があります。西洋医学の場合は、薬による治療と手術の2つの方法がありますが、中国医学では、薬の他に針、灸、そして食事療法を使います。薬膳はこの食事療法の一つです。もちろん食事療法にはさまざまな方法がありますが、そのうちの一つが薬膳なのです。したがって病気の治療や健康維持のために薬膳を用いるには、中国医学の基本の概念が分からなければなりません。  
陰陽の
バランス
中国医学の基本概念では、人間の体のバランス、人間と環境のバランスなどを陰と陽のバランスとして捉えます。病気になる、ならないというのも陰陽のバランスによるのです。陰と陽のバランスが取れているときが健康な状態ですが、これは理想の状態で、実際には仕事で疲れたとか、寒いとか、食べ物とかいろいろな影響を受けて、人間のバランスは絶えず動いています。ただし、バランスが崩れても陰と陽が正常な範囲にあれば病気としての症状は出てきません。この状態を中国医学では『未病』といいます。病気の症状は出ていなくてもバランスは崩れている、こんなとき食事療法が一番良いバランスの調整方法です。未病のときにバランスを調整しないと、バランスの崩れは大きくなって病気になってしまいます。  
未病を治す ここで中国医学の基本概念を整理しますと、人間を陰陽のバランスとして捉え、バランスの崩れが正常の範囲内であれば未病の状態です。このとき西洋医学の病院に行っても治療はしてもらえませんね。症状が出て、病気にならなければ治療できないからです。でも中国医学なら、未病の治療は得意なものの一つです。古い医学書にも書かれていますが、中国医学では「病気」を治療するのではなく、病気になった人「病人」を治療すると考えます。症状が出て病気になった人も、未病の人もバランスを調整すれば正常な状態になるという治療法を用います。これはつまり予防医学ということです。
現代病といわれるもの、糖尿病やアレルギー、日本で特に多い花粉症、また便秘でも、これは食生活が乱れたことが最も主要な原因です。ですから食事の調整が一番の治療法です。
 
「健康食品」は
万能?
だからといって健康食品を食べていれば良いということではありません。「これを食べれば誰でも健康になる」という考えは間違いです。人間の体質はさまざまです。一つの健康食品で、誰もが健康になることはありません。これは薬でも同じです。今は70〜80%の人に効果があれば「良い薬」とされます。中には60%くらいのものもあります。しかし20〜30%の人にとってはただ副作用があるだけです。薬や食べ物は、体質が合う人にとっては健康にさせるものでしょう。しかし体質が合わない人にとっては、それが栄養豊かな良いものであっても、その人にとって良いものとはいえないのです。逆に、食べ過ぎると病気になるかもしれません。  
食材の組合せ 薬膳では体質に合ったものを食べるということ、そして季節に合ったものを食べるということが基本です。そしてもう一つ、食材同士の組合せを考えることが必要です。例えば、味噌汁にホウレン草と豆腐を一緒に入れますね。ホウレン草は鉄分豊かな良い食品です。豆腐も栄養があり良いものです。しかしこれを一緒に食べると、消化されにくいものになってしまい、結局無駄になってしまいます。  
中国医学と
西洋医学
こうした食材の組合せは、中国医学の薬の組合せ理論と同じものです。日本の漢方薬は、江戸時代の鎖国政策のため、この間の中国医学の発展を利用できず、古い時代の理論が基礎になっています。現在の中国では、西洋医学と中国医学が両方とも正式な医学として認められています。大学でも、西洋医学の大学では西洋医学を70%、中国医学を30%勉強します。中国医学の大学では中国医学を70%、西洋医学を30%勉強します。ですから中国の医者は西洋医学も中国医学も扱えますので、病気によってどの方法を優先するかを決めます。例えば慢性病には中国医学の漢方薬や食事療法を使い、急性の病気は西洋医学で治療してから中国医学の食事療法で体力の回復を計るなどです。日本では骨折した場合、手術のあとは自然に治るのを待つだけですね。この時に漢方薬や薬膳の食事療法を使うと回復が早くなります。これは私が大学にいたときに実際に調べてみたことです。  
まとめ 今回は初めての講習ですから、中国医学の病気の概念、症状がなくても陰陽のバランスが崩れている状態、未病のときに治療するというポイントを押さえておきましょう。そして健康食品とは違う中国医学の食事療法、個人個人の体質に合わせた薬膳、つまり人間と環境の影響を考える「整体」ということが大切な点です。  
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