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アミノ酸の話(3)ーアミノ酸と老化予防ー  
アミノ酸と老化

1998年10月、アメリカのスペースシャトル、ディスカバリィ号に77歳のジョン・グレン氏が搭乗し、宇宙に飛び立ちました。この日はお年寄りにとって記念すべき日として、大きな注目を集めました。単に高齢者が宇宙空間でどんな状態になるかが分かる、というだけではありません。年を取るにしたがって骨密度が減ったり、筋肉が萎縮するといった老化現象と、無重力状態での人体の変化に似た点が多いため、様々な医学的・生物学的実験を通して、重要な研究成果が期待されたのです。
その中心課題ともいえるのが、老人の蛋白質分解など、アミノ酸と老人の健康に関することでした。なぜなら、アミノ酸と老化には重要な相関関係があるからです。以下に詳しくご説明しましょう。

 
老人の生理変化とアミノ酸

一般的には60歳を過ぎると「お年寄り」の仲間入りをしたと思われるようです。しかし老人の生理・栄養状態は、老化の進み具合によって変わってきます。
蛋白質に関していえば、その変化は合成と分解という2つの方面から見ることが出来ます。
乳幼児から成長期までは蛋白質代謝の過程で、合成が分解より大きくなります。これは身体が成長する中で多くの蛋白質を必要とするからです。成人期になると合成と分解がほぼ等しくなり、体重も安定しています。老年期に入ると老化の過程で分解が主となり、合成はゆったりとしてきます。体内の蛋白質は次第に消耗し、窒素バランスも乱れてきます。具体的な症状としては

  • ヘモグロビンの合成が減少して老人に多く見られる貧血症になる。
  • ホルモンの働きや小腸の機能が衰えて、蛋白質の吸収過程で分解が不十分となり、有効なアミノ酸量が不足がちになる。
  • 腎臓のロイシン、イソロイシン、バリンの不足によって腎機能が低下し、アミノ酸の再吸収に影響が出る。
  • 肝臓にメチオニンが不足して肝機能が弱まり、脂肪肝が出来易くなる。
  • 脳細胞にリジン、トリプトファン、アルギニン、グルタミン酸などが不足しがちになり、老年性痴呆症やパーキンソン氏病を誘引する。
  • 筋肉繊維が衰えて体力が低下し、免疫能力も低下する。
といったことが挙げられます。
近年の研究では、老人と青年が同じ栄養条件を与えられた場合、老人の血漿中のアミノ酸の含有量が低く、特に分枝鎖アミノ酸が不足することが報告されています。分枝鎖アミノ酸は蛋白質合成作用があり、これを高濃度で補給すると、蛋白質分解作用を抑え、インシュリンの分泌を促進させることで、蛋白質の合成を助けるので、肝臓病や腎臓病、小児用の特殊なアミノ酸として臨床で利用されています。
また体内の生理活動中、エネルギーが消費されるときには大量の酸性物質が発生します。アミノ酸が不足していると抗酸化作用が低下するため細胞の分裂が加速され、疲労や組織の老化の原因となります。
その他、老化による免疫能力の低下はその他の器官にも影響を与えるので、感染症や癌、免疫複合病などの発症率は老年において増加し、終には老衰による死に至らしめます。

 
アミノ酸と長寿

老化の抑制や抵抗力の強化、免疫機能の促進など、高齢者の健康を維持するためには、ミネラルや糖分を含む食品の摂取が必要です。ただし免疫機能を支える基本的な物質は蛋白質であり、すべてが蛋白質から作られています。このため人体に蛋白質やアミノ酸が不足すると、ミネラルや糖分はその機能を果たさなくなってしまいます。
さまざまな実験で、必須アミノ酸が不足すると体液の免疫反応が低下し、正常に抗体が作られなくなることが分かりました。必須アミノ酸は免疫機能において重要な働きをしているのです。
また、栄養学や生物化学の発展により、ストレスなど精神的に極度に緊張した状態や、ある種の病気の時は、本来体内で合成されるはずの非必須アミノ酸が不足しやすいことも分かってきました。その中で長寿に特に関係の深いものは、タウリン、アルギニン、グルタミンなどです。

 
タウリン

タウリンはメチオニンが硫化作用によって転化したものから合成され、中枢神経系の老化に深く関係しています。高齢者における中枢神経系の老化の過程は最も複雑ですが、タウリンは大脳内の老化物質の増加を防ぎ、細胞の正常な代謝を維持する働きがあります。また抗酸化作用も強く、顕著な老化防止作用があります。

 
アルギニン

アルギニンは体内で作られるアミノ酸ですが、病気や怪我のときは不足となって、窒素バランスや生理機能が乱れることがあります。窒素酵素系の代謝に深く関係し、血管の内皮細胞や脳組織・肝臓の細胞中に存在します。各機関のホルモン分泌を促し、免疫機能を発揮させる作用があります。高齢者の免疫力強化のための注射液としても利用されています。

 
グルタミン

激しい運動時や怪我、感染症などのとき、必要量が増大して体内の合成能力を超えてしまいます。グルタミンの体内含有量が少なくなると、蛋白質の合成が減少し、小腸の粘膜が萎縮し免疫力が低下します。腸は人体における最大の免疫器官で、腸に栄養が供給されないと免疫力が弱まり細菌の発生を引き起こします。動物実験でも、静脈輸液(全体の2%、アミノ酸の25%がグルタミン)によって腸の繊毛萎縮が回復し、免疫力が高まることが証明されています。高齢者にとっては免疫力強化のために不可欠なアミノ酸です。

 
高齢者の
アミノ酸補給

高齢者の体内総蛋白質量は青年の60〜70%まで下がります。これは筋肉の減少と関係しているのでしょうが、だからといって必要な蛋白質量が少なくて良いということではありません。高齢者においては蛋白質の合成より分解が主となり、また胃液の分泌が減ったり、胃液の酸度が下がることで、蛋白質の消化吸収量が減少します。したがって需要量は、逆に増加するのです。一般的には成人期の30%増くらいが目安といえるでしょう。日常の食事では体重1kgに対して1g前後が蛋白質の必要量といわれますので、一日の必要量は60〜75gくらいになります。その中、1/3は動物性蛋白質が良いでしょう。また年齢によって必要なアミノ酸も変わってきますので、蛋白質を質量ともに充分に補給することが、高齢者にとってはとても重要なことなのです。

 
高齢者の
理想的食事

高齢者にお薦めの食材の組合せは、以下のようなものです。
・ 鶏卵:1個
・ 牛乳:1カップ(砂糖を加えても可)
・ 果物、野菜:500g
・ 肉魚類:100g
・ 豆製品(豆腐なども含む):50g
・ 穀物類(米、麺など):500g
・ 湯:毎食1カップ
以上は一つの目安ですから、工夫次第でいろいろ組み合わせてください。野菜や果物はその時々で適当なものを選んで結構ですし、肉や魚はいくつか組み合わせたり、調理方法でバラエティに富んだ料理が出来るでしょう。牛乳もヨーグルトなど乳製品に変えても良いでしょう。

 
 
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